仕えるということ⑥

・・・つづき

いよいよ新年会の会場の大広間についた。和室でグルーッと御膳が並べてあり、さながら温泉旅館の宴会場といった雰囲気。まだそれほど人は入ってはおらず、ホテルのスタッフの人達が忙しそうに最後の準備に追われているところだ。次々と御膳や酒が運びこまれている。ホテルのスタッフに混じって一際異彩を放つ人物がいた。ビートたけしさんの「座頭市」の原案でお馴染みのロック座の会長である初代東八千代こと斉藤千恵子さんである。
「とりあえず、ママ(斉藤会長)に挨拶してくるね」と言って座敷の奥であれこれとスタッフに指示を出してる会長の方へ向かった。「お母さん、おはようございます」
「おや、おはようさん。えーと、誰だったかね?」
「お母さん、小姫です、葉山小姫。」
斉藤会長はかなりのご高齢のせいか、自分の所の所属の踊り子でも、顔と名前が殆ど一致しない。
「ああ、そうだったね。今日はしっかり頼むよ。おや、そちらさんは?」
と私の方に視線が来た。
「あんたのお客さんかい?お若いのにご苦労様でしたな。」
「こちら、けいたさんです。今日の私のお付きをしてくれます。」
「そうかい、うちの娘がお世話になってますね。今後ともご贔屓に頼みますよ。」
ロック座のママさんに頭を下げられてこちらは恐縮しまくりである。
「早速で悪いけど、あんた、控えにいる子達を皆呼んでおいで。そろそろお客様もお入りになる頃だよ。女の子達にはお出迎えやらお酌やらやって貰うからね」「分かりました、お母さん。じゃあ、けいたくん、行こっ!」
と、私を促して控の間の方へ向かうさきっぺについて行った。

つづく・・・